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【レポート】先にある未来~三重県女子#8黒川心音選手~

「第32回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2019」の2日目、女子決勝トーナメント1回戦で因縁めいた対戦があった。長崎県と三重県の対戦である。結論を先に書けば63-46で長崎県が勝利している。
その敗戦を誰よりも悔しく感じているのは三重県の⑧黒川心音選手である。チームの中で唯一の1年生だが、スタメンのポイントガードとして三重県の起点となり、ノーマークを見つける広い視野と、素早い決断力で次々にゴールシーンを演出する。

実は黒川選手、小学校まで長崎県で暮らしていた。家庭の事情で三重県の中学校に進学したのだが、それだけに地元ともいうべき長崎県との対戦を意識しないわけがなかった。
「絶対に勝ちたい……負けたら私が三重県に来た意味がない」
それまで試合のことや自身のプレースタイルについて、少し恥ずかしそうに、しかし笑顔で話していた黒川選手が、そのときだけは言葉を詰まらせ、一瞬タオルで顔を覆った。
「一番勝ちたいというか、ここだけには負けたくなかったです」
コート上ではどんな状況においても表情を変えることなく、飄々と、淡々とプレーする黒川選手の内側にある熱さ、勝負に対する執着心がそこにはあった。

ゲームそのものを振り返っても「悔しい……大事なところで自分が退場(ファウルアウト)してしまったし、シュートも外してしまいました。チームのためになることができなくて、悔しいです」と口にする。
確かにチームの起点ともいうべきポイントガードが退場したことは、その後の追い上げに水を差すものだったかもしれない。しかし彼女の左手から繰り出される変幻自在なパスが三重県を決勝トーナメントまで勝ち進めた要因のひとつであったし、何より観ている者をもうならせる魅力もある。特に左手一本で――つまりはベースボールスローで自陣から相手ゴールの下まで飛ばせるロングパスは、中学女子の選手としては稀有である。長崎県戦では自分の真後ろに出すノールックパスまで披露していた。
「そうしたパスは(3人の)兄の試合を見て、パスを見て、こういうパスもあるんだなぁって知りました。兄弟から得たものです」
彼女の次兄は現在、東海大学付属諏訪高校で同じくポイントガードを務める黒川虎徹選手だ。あの兄にして、この妹あり、といったところだろうか。

所属チームとは異なる、選抜チームで戦うことの難しさを知った黒川選手。将来の夢は日本代表に入って、バスケット界の頂点に立つことだと語る。しかしその前にやるべきこと、なすべきことがある。それは他ならぬ黒川選手自身がわかっている。
「全中(全国中学校バスケットボール大会)で優勝して、日本一のガードになることです」
スペースを作ったり、ノーマークのチームメイトを見つける能力を含めてパスの実力は現時点でも日本一に近いところにある。
「でも、パスを狙うばかりでなく、チームメイトが困ったときにもっと攻めないといけません。ディフェンスが2人、3人と寄ってきたときこそパスを捌きたいんだけど、その間を割って、アウトナンバーを作れるようになりたい」

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