平成最後の、そして大会そのものも最後となる「第32回 都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(以下、ジュニアオールスター)」は京都府男子の優勝でその幕を閉じた。 「初優勝です。ベスト4に勝ち進んだのも初めてです。しかも(決勝戦の相手である)東京都Aは昨年、2回戦で負けた相手です。ただだだ選手たちがすごいとしか言えません」 チームを率いる市場良太郎コーチは興奮を抑えきれない様子でそう語った。 今年のチームは京都府の育成センター(DC)の活動を通して、U13から築き上げてきた。そのなかで選手個々の特長を捉え、コーチ自身は昨年の反省も踏まえて、選手選考をおこなったと言う。 「組織としてやってきたことが実りました」
オフェンスの主軸を担うのはオールラウンダーの④波多野心優選手とガードの⑤高山鈴琉選手だ。二人はともに得点力が高く、しかもタイプが異なるため、相手チームからすれば守るのがやっかいだったはずだ。そこに⑦高木良太朗選手のアウトサイドシュートも加わると、余計にディフェンスの的は絞りにくくなる。
しかし決勝戦では彼ら以上に存在感を示した選手がいた。センターの⑧西村陽太朗選手である。オフェンスでは波多野選手らをフリーにさせるべくスクリーナーに徹し、シュートが放たれれば積極的にリバウンドへと飛び込んでいく。身長は182センチとけっして大きくはないが、彼のような泥にまみれる選手がいることはチームにとって非常に大きな推進力となる。 「今大会では1試合ごとに成長してくれて、決勝戦は100点満点です。東京都Aを相手によくリバウンドを取ってくれました」
市場コーチが笑顔でそう評価すれば、学校単位ではライバル校として戦う高山選手も 「一人だけリバウンドに突っ込んでいって、取ってくれる。そのおかげで攻める回数も増えるし、実際に得点を取れたところも多かったです。すごくいい存在でした」 と、その存在の大きさを認めている。 西村選手本人も「リバウンドで活躍して、チームのために、ミスなどがあればカバーする」ことが自分の役割だと語る。
一方で、所属する中学校ではインサイドで攻める役割も担っているが、この選抜チームではそうした得点に絡みたい気持ちを抑えたと明かす。 「正直もっと攻められたかなとも思うんですけど、チームのためになるなら何でもいいからやろうと思っていました。他の人の思いも背負ってプレーしようと思っていたので」 他の人とはベンチにいるチームメイトや、今大会のロスターに選ばれなかった、京都のDCでともに切磋琢磨してきた仲間たちのことだ。さまざまな思いを抱えながら、それでも選抜チームを支えてくれた仲間たちのために、西村選手はコートの上でチームメイトを支えたというわけだ。
中学校のチームメイトである波多野選手は今大会の最優秀選手に選ばれ、高山選手も優秀選手に選ばれた。彼らの得点能力は確かに目を見張るものがあるが、その影に西村選手のような、自らを抑えて、チームの勝利を支えたロールプレーヤーがいたことも忘れてはいけない。いや、誰一人欠けても京都府の初優勝はなかった。選抜チームならではの優勝を、最後のジュニアオールスターで京都府が示してくれた。