「準決勝をあれだけ大勝するチームなので、とにかく機動力で勝つしかないと。また、リバウンドだけでなく、チャンスがあればボールを奪おうとしましたし、オフェンスでは、できるだけセットからの攻めにしないで走り切りろうとしていました」
2年ぶり2回目となる優勝を飾った大阪の伊東信吾コーチは、東京Aとの決勝戦をこう振り返った。 180㎝の⑮森美麗選手らを擁する東京Aには高さではどうしても劣ってしまう大阪だが、東京Aの高い攻撃力に対しても堅いチームディフェンスで阻止すると、攻めては3Pシュートなど外角シュートを効果的に決めて主導権を握る。特に持ち味が発揮された後半に、東京Aを引き離し、53-44で勝利した。
「前半の出来が良かったので、勝ちを意識して止まってしまったところがありました。そこで『多くの人が東京Aが勝つと思っている。(優勝を)期待しないでいい。自分たちのバスケットをやろう』と選手たちに言ったら、後半も本当にいい顔をしてやってくれました」と、伊東コーチは試合中での面白いエピソードを語ってくれたが、今大会のチームについては、「スタート5人と他の選手が本当にそん色なく、みんなでバスケットができることが強みでした」と言う。
スターターだけでなく、どの選手が出てもしっかりと仕事をこなすことが出来る布陣は優勝への大きな要因となり、「後からパッと試合に出て、そこで力を発揮できる選手を残しておく。そういったことは選抜チームだからできるのだと思います」と、伊東コーチ。大型選手や飛び抜けた得点能力を持つ選手はいなかったものの、チームが一つにまとまり、組織力でつかんだ日本一だったといえる。
そのチームを強気のプレーでけん引し、大会最優秀賞を受賞した⑤横山智那美選手は、大阪の強みを「ねちっこさ」と評する。それは「ディフェンスではルーズボールを絶対に追うことで、オフェンスでは何本もシュート打って、そのリバウンドを取りに行くこと」。昨年大会では、決勝で敗れた経験を持つ横山選手は、「気持ちの面で、みんなが緊張しないでプレーできるようにサポートしようと思っていました」と、エースらしく6試合を戦い抜いた。 目標は日本代表になること。横山は、「みんなから応援される選手になりたい」と言葉に力を込めた。
そして横山選手とともに2018年度バスケットボール女子U16日本代表チーム日本代表候補選手として大会終了後には海外遠征に向かった東京Aの森美麗選手や愛知の福王怜奈選手も抱く思いは同じだ。
準優勝となった森選手は、「ポストプレーをすることと、いつでもリバウンドに行くこと」と、しっかりと敗戦を受け止め、試合後は冷静に今後の課題を語り、大会最長身で1年生の福王は、「日本代表になること。走れて、外のプレーもできるようなセンターになりたいです」と、準決勝敗退に涙をにじませながらも、はっきりとした口調で将来の目標を言葉にした。
「日本人の勤勉さを全面に出して取り組むことが大事。カテゴリーが上がってもより勤勉にやれるように。大学生になったら、それまでの経験から気を緩めたり、手を抜いたりすることを覚えていくとは思うのですが、根底には“勤勉にやる”という気持ちがあってほしい。そういった選手がどんどん上のカテゴリーに上がってほしいと思っています」と、大阪の伊東コーチ。取材の最後に、大阪府のみならず、日本のバスケットについての思いを語ってくれた。
今回で開催数32回を誇るジュニアオールスターは、先日現役引退を発表した吉田亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)をはじめ、藤岡麻菜美(JX-ENEOSサンフラワーズ)ら後に日本代表として活躍する選手を数多く輩出した大会。この大会が自身にとって初めての全国大会だったという選手も少なくない。 今大会をもって長きに渡って開催されたジュニアオールスターは幕を閉じるが、世界へ通じる価値ある大会は、新年度から始まる「U15選手権」に引き継がれることになる。